導入
僕らは位置について横一列でスタートを切った。プロフェッショナルの主題歌にスガシカオはそういう歌詞を書きました。
偉大な表現者に口出しするつもりではないのですが、これは嘘です。
機会を平等にしようと一生懸命にしている日本ですが、東京に生まれるか沖縄に生まれるかで人生は全く違います。
オタクにとって身近な話では、コミックマーケットへ参加するのにかかる費用が不公平です。
また、中途半端に困らない田舎に生まれたら上京への熱意は違ってきますし、芸能人などはなんとなく北海道・沖縄出身の方が多い気がします。
そんな不平等な世の中に生まれた私たち、よく見ると顔も違います。
しかし、どんなに混迷した時代でも不平等な世界でも男達の夢は平等でした。
「生まれ変わったら美少女になりたい」
それは私の、いいえ、我々の夢だったのです。
さて、早速水を差して参りましょう。
つまり、今回は本当に美少女に生まれたら幸せになれるのか?という命題について考えるということです。
ここまで命題に中身が無いと代理思考の甲斐があります。
皆さんがこの生産性のない命題に対して、読むだけで満足できるよう努めて参りたいと思います。
どうして美少女に生まれたいのか?
この命題、厨二病にはうってつけの話です。なぜならそれを発症するとほぼ同時に、美少女を好きになる季節が人生にはやってきます。
懐かしい人達と過ごした時を思い出すと、クラスに数名しかいない可愛い同級生を目で追っては、目が合うと逸らしたりしてました。
そして「Dark side of the Aohal」である非モテ厨二病患者の心の闇にとある感情が生まれます。
「私は何故醜く生まれながらにして人を喜ばせられないのか?ワタシハビショウジョニナリタイ」
オーソドックスな美少女になりたい理由は自らが求める在り方そのものだからです。
生きているだけで無条件に求められる存在、若くて狭い世界では絶対的強者です。
これで美少女になりたい理由説明終了、というわけにはいきません。
なぜなら、モテ男が美少女になりたい理由がないからです。(私自身がモテ男ではないため、美少女になりたいと思ったことがない人もいるかもしれませんが)
君の名は。ブームからしても男は可愛い女になってみたいことは自明です。非モテが女の子になりたい理由を知的好奇心ということにしたりしますが、実際なりたい理由ベストテンには入ると思います。
おそらくモテ男といえど恋愛をすると困難な局面をむかえます。そのような時に女の子がどう思うのか?美少女(彼女)の気持ちになって考えられたらと思うはずです。
その他にも男が美少女になりたい理由があります。それは怠惰です。
ヒモ男というとどれほど美形な男子であっても印象が悪いものです。家事などをこなす専業主夫という生き方さえも未だに普及せず。社会で働かない男性は怠け者として見られます。(あくまで個人の感想です)
現代日本を生きる男性にとって労働は市民権を保証するものと言えます。労働は厳しくほとんどの男性が従事しているものですから、労働してないなんて狡いと考えてしまうのも人の性です。
一方で花嫁修業中の家事手伝い美女というのは男性にとって最優良案件ともなりえます。
場合によっては、ニート顔負けの生活をしていても縁談では最優良と言われるなんて羨ましい限りです。
男性にとって、青春時代は勝ち組確定、身体の構造に興味も尽きず、働かなくてもよい。
そんなやりたいことずくめの美少女ライフは夢にほかなりません。(最近は顔採用等も美少女羨望に加担していると思います。)
さて、このブログを読む方(ツイッターのフォロワーの一部が読んでくれる程度)に美少女はいないかもしれませんが、もしいるのだとしたら美少女ライフの大変さを伝えたくて怒髪天を突く思いでしょう。
確かにずっと羨んでいてばかりでは、記事として成立しません。
そこでここからは美少女ライフ(妄想)を追いながら見えざる苦労を洗い出していきましょう。
さあ美少女だ。
偶にツイッターで「俺が美少女だったら自分のように容姿に恵まれない男に〜」とのたまう輩を見かけます。
正直、生まれながらに美少女であればまずないはずです。美少女を取り巻く環境はそんな考えを起こさせないと予想されます。
美少女も人間、時が来れば人並みの恋をするでしょう。
その恋においても望みが高くなってしまったり、競う相手が同様に美少女であったり、下手に美少女な分、競争相手の容姿が可愛くないのに優位だとうける敗北感も増大しえます。
他にも特に好きでもない人から愛の告白を受けたり、その好きでもない人のことを好きな他の女の子から敵意を向けられたりという苦労は想像に難くないです。
美少女の多くは望まずして青春の中心側へと誘われます。根の暗い男子にとって、美少女化が幸せに繋がるかは怪しいものと言えるでしょう。
雑多にまとめると、当然ですが、美少女だって苦労するということです。
しかしながら、ここまでは一般的感性で想像がつきます。代理思考の醍醐味はここからです。
皆さんの周りの美少女のうち何名かは、早くから結婚していたりしませんか?
そしてすぐ離婚していたり、或いは話していても夫の愚痴や子育ての苦労話ばかりだったりしませんか?
もしそうであるならば、そこが人生の難しさなのだと私は思います。
そこで、どうして一部の美少女がそういった人生に収まるのかをより詳細に考えていきます。
青春の勝者は、人生に勝てるのか?
想像してみましょう。貴方が美少女に生まれ初恋の人と恋仲になりました。
いくつですかと聞くとおそらく14,5くらいだと思います。
二人は強く想いあって、高校受験も大学受験も共に乗り越え、男は難なく就職し貴方は家庭へ入りました。
めでたしめでたしです。
そう、めでたしめでたしなのです。後は生まれ持った美しさを失いながら、子に時間を取られ生きていくでしょう。
少しおかしくはないですか?これではどこか幸せでないように感じます。
愛しい人と目の前の課題を一生懸命に駆け抜けた貴方は幸せのはず。しかし、どうにも煮え切らないのです。
そう、美少女ライフには罠があるのです。
運が良ければ悩むことがないという重大な罠が潜んでいるのです。
読者の中には、エントロピー増大という言葉を物理の教科書で見た人もいると思います。
水槽にインクを垂らすとインクは様々な方向に分散して行き無限の広がり模様を見せた後、均等に分散し変化しなくなるまでエントロピーは増大し続けるという概念です。
現役の頃はピンと来なかったのですが、学問には一切の無駄がないと驚くばかり、さきほどの美少女ライフはエントロピーの増大が速いのです。
若くして、人生の水槽に落ちたインクが分散していないところは少なくなり、もう限られたパターンにしか変化しないのだと思うと、幸せなはずの人生が急に色を失うのです。
もしかすると、早くに結婚した夫婦が離婚するのは生活のままならなさ以上に、この水槽の壁を打ち壊して彩り鮮やかな変化の可能性を取り戻したいからなのかもしれません。
漸く思いもよらぬ理屈に辿り着きました。
美少女となり青春時代に降りかかる幸運をひたすらに受け取り続けるだけでは幸せになれないのです。
(※無論、過去の無思考状態を認め心の整理をつけられる人もいますがそれも楽ではありません)
昨今の美少女転生志願者は自分が美少女に生まれたら絶対に楽できると思っているところがあります。
違います。それも、簡単に考えつくより複雑なレベルでです。
そもそも100歳時代が来ると言われる現代に、ジャネーの法則ありと言えど、たかだか二十数年程度の有利で終生まで幸せだなんて考えるのは控えめに言っておめでたすぎます。
とはいえ、自分にないものがあれば人生は楽と考えるのは人の性です。美少女転生を良いものとして妄想するのは仕方がないのです。
しかしながら、この話は隣の芝はそこまで青くないで済ませるものではありません。
私は皆さんの今に人生の水槽を作ってみて欲しいのです。青春の勝者が人生に勝つわけではないことが理解できたならば、かつて踏破できなかった領域には、広がっていない人生のインクに気づくはず。また、そのパターンが自分だけのものであることにもです。
青春の勝ち負けは誰かの幸福観によるものです。
美少女ゆえにその目くらましの幸せを眼前に出されてしまう。そのようなことがなかったのはいいことだったのだと私は考えています。
もし私が美少女であったなら、おそらく若くして結婚し、子供を産み、生活に追われ、人生に対しての無思考状態は未だに続いていたでしょう。
美少女と言えど、人生を俯瞰し計画を立てる必要があるのです。
人生において計画通りなど決してありませんが、ドワイト・アイゼンハワー曰く「計画は無価値だが、計画を立てることは全てだ」だそうです。
誕生と共に人生の水槽へ落とされたインクが、いまだほとんど無限のパターンに広がるならば、より美しいパターンを表すように生きたいものです。
総括
青春時代の勝者は人生の勝者とは限りません。
美少女に生まれたら人生が楽ではありません。怠け者は寧ろ苦労しそうです。
人生は水に落ちたインクが広がりきるまでと似たようなもの。経過はほとんど無限のパターンを持つが終わりは一様。
世間一般的な幸福を最短効率で手にすることは、インクの広がりが終わるのを早めるだけで怠け者が美少女になるのは危険。
怠け者かもしれない人にとって、美少女でないことは良いことかもしれない。
ここまでを簡潔にまとめると以上のようになります。
ここまで読んでいただいて、「じゃあ貴方はブスに生まれてもいいのか?」と思った方に答えます。
それはノーです。私は美少女に生まれることが楽ではないと言いましたが、不幸だと言った覚えはないです。
親の躾がよく人生について真剣であれば、それでも顔の悩みに足をすくわれる外見より美少女である方が有意義に時間を使えます。
世の中が顔がいいことだけでままならない事実をより正確に知ることができるのは羨ましい限りです。
さて、今回も長くなりました。本当にここまで読む人がいたらありがとうございます以外の言葉がありません。
この次もその先も、よろしくお願い致します。
えっ?もっと先?死んだ後?
そうですね
生まれ変わったら美少女になりたい